論点。
今日の音。「Faith Evans」 “Again”


他人に心を許すということと、心を許した人に対し失礼なことをしてもよいということを同じだととらえる人がいる。
誤解を恐れずに言うと、わたしのまわりでは関西の人に多い。
そして、彼のお母様も関西の人である。


彼女が表参道に来て10日。
今日の朝7時に丸の内のホテルへ送り、リムジンバスで成田に向かったのだが、昨日、問題は起こった。

彼女は美人またはかわいい子が好きだそうだ。
「美人だったら馬鹿でもいいの」と言う。
が、美人だったら大抵良い人なのだ。綺麗でも、性格が悪い人は顔に出てしまう。
ので、「美人がいい」と公言して憚らない。

彼女はわたしの母親の話しを、日本に来ると必ずする。
彼は知っているが、わたしの家はかなり複雑な家であり、わたしはほぼ10年くらい、母親とまともに口をきいていないし顔を見てもいない。
母親の父である、わたしの祖父にあたる人も、「あいつはおかしい」と言う。
実の父にもそう言われてしまう女である。

が、彼の母上は以前モデルをしていたわたしの母のことを美人だと思っていて、何年か前に親の話しになり、わたしがあまり話したくない、と言っても彼女は
「でも綺麗な人っていい人になるわよ」と無邪気に言っていた。
「そう思いませんが。」と言うわたしに「いつかわかるわよ」と自信たっぷり。

今回、某ステーキ屋さんから自家製のカレーを頂き、朝ごはんにと温めていた時、もう忘れてしまったが何かの拍子で母親の話しになった。
「どれくらい会ってないの?」
「約10年です」
「でも、会いたいなあとか、思わないの?」
「思ったことは1度もありません」
「何があったの?」
「…。いろいろありましたけど、わたしが小さい頃男と出て行ったり…」
「好きだったらいいじゃない」
「…。」
「おじいさまやおばあさまが亡くなったこともお母様はご存じないの?」
「はい」
「お葬式にもいらしてないの?」
「はい」
変ねえ、みたいなことを彼女は言い、わたしは
「もう父も呼びたくないみたいですし、祖父も祖母もずっと前からそれは知っていましたから。もうこの話しはいいじゃないですか」
「うーん、不思議ねえ」
ふしぎふしぎー、と彼女は子供みたいにつぶやきながらリビングへ去り、ひとり
「でもお父様がいらっしゃるんだから…ぶつぶつ」と何やら言っていた。

話したくない、と言ってもこう。
以前から「人の家のことは当事者しかわかりえませんから」と言っても「でも家族なんだし」などなど。
わたしは温めたカレーを彼女に渡し、「東大の学食のカレーみたいねえ。ゆるくてあんまり…」
「わたしは好きですが」
素早く食べ、部屋に戻りiPodで音楽を聴き、心配してやって来たドラミを部屋に入れ、本を読んだ。

人の家のことをいろいろ詮索するのって何なのだろう。
確かにわたしが小学生の頃、男と出て行ったのは「好きだったら仕方ない」のかもしれないが、その一言で片付けられるような事柄ではなかった。
彼女から見ればそうかもしれないが、親の行動というのは子供の人格形成に大きく影響する。
わたしはもう彼女と話す気もなかったし、いつも食べ物に関して文句を言うのにも疲れていた。

なかなか電話に出ない彼が心配して、何十回も電話をしてくるので電話に出、様子がおかしいので問い詰められ、彼に言われたことを話した。
「お母さん、随分考え方変わったな」と彼は言った。以前は不倫とか浮気とか、大嫌いだったそうだ。まあ今彼女も複雑なお付き合いをされていたりするのでそれは正当化しないとやっていられないのだろう。
「あの、pointはそこなんですか? わたしは何で人の家の事情を根掘り葉掘り聞いておいて、自分の理解の許容範囲を超えていたら“ふしぎふしぎー”って馬鹿にしたみたいに言うのかその理由がわからない。その人の家の事情なんて、その人にしかわかんないじゃん。なのに自分の小さいものさしでその人のことを勝手にわかった気になって“仕方ない”とか“いいじゃない”なんて誰が言えるの? 人の気持ちになって考えるってことが出来ないわけ?」
と彼にまくしたててしまった。
電話を切って、わたしは何でここまでいらいらするのかなあ、と自分の家のことを考えてみた。

わたしが小さい頃から、わたしの家は探偵に調べられたり無言電話が何回電話番号を変えてもかかってきて、ポストを燃やされたり、いろいろあった。
大きくなって、その理由を知ってびっくりし、また、家に食べ物がなかったり、学費を払っていなかったり。父はほとんど家にいなくて、そういうことを知らず、母親はバッグや宝石を熱心に買っていた。年中ダイエットだった彼女は、あまりご飯を食べないので家にはない。
姉は彼氏の家に消え、残されたのはわたし1人。
母親は自殺を試み、お風呂が大変なことになり、家から包丁がなくなったり、わたしと姉はショックで2週間ほど学校を休み、その間の記憶がない。
書けるのはここくらいまでで、他にもたーくさんある。仲の良かった編集者は、「凛ちゃん、本出さない?」と言っていた。
そうだなあ、結構いろいろあるなあ、とびっくりするくらいいろいろなことを思い出した。
でも、他の人から見たら大したことないのかも。
今、わたしにとってそれらは「結構大変だったねえ」だけども、昔は本当につらい時も、あったのだ。

何故怒りを感じたか。
義務教育の間、周りには彼の母上のように、自分の物差しで人を推し量る人ばかりだった。
その人から「事実」を聞いたわけでもなく、噂などを勝手に「事実」とし、自分の共感力・想像力のレベルの低さを露呈させる人たち。
その人の意見を聞かず、聞いても耳に入ってこない人たち。
「いつもあそこのお母さんは、派手ねえ」
「新しい服を着て。いいわねえ、ちゃらちゃらしてればいいんだから」
「家事できるのかしら」
「子供が遊びに行くと、あそこの子にそそのかされて遅く帰ってきて困るわ。不良になっちゃう」
などなど。直接わたしに
「あなたのご両親は変な人たちね。まともに育たないわよ、あなた」と言った人もいる。
「あなたと遊ぶと子供が不良になる。悪い遊びを教えないで」。
わたしはあなたの子供が怖がるので、家まで送ったりしてるんですけど。
自分の子供が遊びたいって言っているんですけど。

担任の先生も、両親を懐柔したかったが出来ず、かと言って自分の事を「先生」とも崇めなかったので扱いに困っていた。また、わたしは同級生からいじめられており、それを母親が知って担任にどう対応しているか聞いた時、その女は思慮深く、深く考慮している顔を見せなければいけない、と思いながらも筋肉がついていかず、薄笑いを浮かべていたのをはっきり覚えている。
わたしが「別に気にしていない、一緒にお手洗いに行かないと友達とは言えないと思っている人たちと友達面しなきゃいけないなんて、疲れる」と言ったため、担任はためいきをついていた。
後から「あの親にして、この子あり、ね」と。
担任も、あることないこと言われ、最初は戸惑っていたが、徐々に冷めた目でその子たちを見、1人で図書館に行き、給食も1人で食べるようになったわたしに困っていた。
「先生、助けてください」と言える子供だったら、いろいろ違っていたのだろう。

周りの親から、「あの子の家も大変よねえ」「母親が出て行ったらしい」「やっぱりねえ」「かわいそうよお」「ぐれるわね」など、憶測で物を言われ、ワイドショーを見るように、この子はかわいそうだ、でも自分達には関係ないし、他人の不幸は面白い、という顔で見られるのにほとほと嫌気がさしていた。
高校くらいから、そういう人はいなくなったのだが、やはりわたしの境遇を知り、勝手に想像、同情し、かわいそうがる人はいた。そっちの方が、まだまし。
他人の家のこと、わかったように物を言うなんて、品性を疑う。

本当にそういう経験をした人は、何も言わない。言えないのだ。
言ってもどうなるものでもないから。
自分から話したのならまだしも、勝手に情報の断片を貼り付け、自分好みの「事実」に作り変えそれを確かめるために話しを聞こうとするのはやめて欲しい。

お昼、最近いつも『リトルリマ』に行っていたのだがわたしは辞退。
家で勉強していると、いいところで彼女に邪魔されていたので外に出て勉強することにし、素早く準備して家を出た。
ドラミが随分甘えてきていて、わたしも一緒にいたかったのだがドラミといる幸せよりもあの人と同じ空間にいるのが耐えられず、スターバックスへ。

歩きながら、結局わたしの家って人から見てどうなんだろう、と聞きたくて、火鉢くんに電話したのだが出ず。
彼から電話があり、「お母さんに話したよ。僕もそれは許せないから」と。
彼女にもう家のことは聞いてくれるな、と話すと彼女はごめんなさい、もう聞かない、と言い、が、彼女のお姉さん達にクッキーをわたしの名前で送ってきたり、大きいところに引っ越したりしたのでてっきり結婚するのだと思っていたらしい。
クッキーはわたしのミスで、いつもわたしの名前で頼んでいるから習慣で送ってしまった、とお姉さん方に言ってください、とすぐさまミスに気がついて電話したのに彼女はお姉さん達に弁解もしておらず、結婚と勘違い。
やっぱり。わいろみたいじゃん! と彼に言ったのだがそのとおりになった。
もし結婚するなんて決まったら、お菓子を送ってご機嫌取ったりしない。ちゃんと挨拶しに行きますよわたしは。
ねんざをした彼女を、彼は家まで送ったそうだがその時「本当に良くしてもらっているのにそんなことしちゃってごめんなさいね」と泣いてしまったらしい。
最近涙もろい彼女。

ねむすぎて仕方なく家に帰ると、ドラミがダッシュでやって来た。
いつもより激しくごろごろ言い、ごろんごろんするので撫でていると彼女がやって来た。
「あの、わたし変なこと言っちゃってごめんなさいね」
変なことって、どのことですか? と普通の人には聞くところだが、
「もういいですから」
と言いドラミを撫でる。わたしは苦手だと思うと顔が見れなくなってしまう。
「もう聞かないので」と言われた。
わたしは怒っていたが、この人には何を言っても駄目だ、ともう理解したのでずっと玄関の窓から外を見るドラミを撫でていた。
無言の5分間。その間、向こうからice breakerになるのが筋だと思ったのだが、彼女は黙っていた。

泣いた、と彼から聞いて、何だかかわいそうになってしまったので帰って来たが、全然大丈夫そう。なんだ、早く昼寝して塾に行こう、でもはっきり言った方がいいのだろうか、といろいろ考えていたのだが、謝るのに慣れていないのがありありとわかったので一応年下だし、とわたしから口火を切った。
家のことをちょっと説明したのだが、
「大変だったのね。みんないろいろあるわよ」
…。
「知り合いの教授の家もね、」と始まった。
あなた、悪いと思ってますか? 自分が人を嫌な気分にさせたのに、あなたの知り合いの例をあげて自分の正当化ですか? わたしはびっくりした。
「人の家のことは当人達にしかわかりませんから」
と言っても「みんな結構大変よ。あなたのおうちも大変みたいだけど、人は変わるから、駄目だって決め付けないで? 綺麗な人は、ちゃんとなるわよ。わたしはそう思ってるの」
お前に何がわかる。わたしも母親を理解しようと、3回くらいトライしたが無理だった。その度あいつはちゃんとする、とかいろいろ言ったが全部反古になっている。
「わたしも何度も試みましたが、駄目なんですよ。何もしてないわけじゃないです」
「あら、そうなの? でもね、年をとると変わるからね」
「プライド高いみたいですから」不愉快さをにじませても
「プライドなんて捨てちゃえばいいのよ。この年になってそう思ったわ」
彼女は母親に会いたいらしい。…。
プライド、捨ててないのあなたじゃないんですか? 何で他の人の例をあげるんですか? そこまで自分の非を認めたくないんですか? 本当に反省しているのだろうか。
何故わたしに謝っていたはずだった会話が、自分の話しにすりかわっているのだろう。

結局彼女が容易に理解出来る、「金だけが目当てで子供に愛を与えなかった女」という人物像に母親は落ち着いた。
わたしは「何で自分の物差しでだけ判断するんですか? あなたが言ったことで、わたしが気分を害したんですよね。他の人の例をあげても、意味がないと思いませんか? あなたから見たら同じ事例かもしれませんが、当人達には全く違うものなんですよ。それに意見を求められていないのにする人が、わたしにはわかりません」と言いたかったが、彼女の口は止まらない。
「New Yorkの人たちもね…」
ずっと下を向いていたのに、わからないらしい。しまいに
「あなたがうちに来てたらかわいがってあげたのにね」
いえ、遠慮します。

塾に行く気も失せ、家でご飯をこっそり食べようと思っていたら、彼が『ローブリュー』の予約を取ってしまい、3人で行った。
その間、わたしは話すこともなく押し黙っていたが、彼女は知り合い(友達でもなんでもない人!)の娘が「オックスフォードにアクセプトされたけど、まだ試験も受かっていない。東洋学だかなんだか、簡単な学部だ。イギリスのTOFELみたいなテストは簡単で、イギリスの大学は入りやすい」とかハーロー(イギリスの全寮制男子校)に彼女の生徒で入った人のことをいろいろ話したり、「ハーローは学習院みたいなもので、大金持ちの子供達もたくさんいるけど大学はいいところに入れない」とか「ブラウンとかコロンビアなんて、入る価値もない」などなどお口が元気。彼が「コロンビア、凛ちゃんも…」と言ったのだが「コロンビアって入りやすいのよ」とばっさり。「わたしはあいびーりーぐくらい出ている人じゃないと、話したくないわ」。
あのう、あなたじゃあ入ってみれば? 受かるの?
SATの点数の話しとか、あの人はいい車乗っているとか、いいスーツだとか。
このアスパラはまあまあ、だとか。この料理は望んでいたものと違う、とか。
あそこの料理は美味しい、とか、酢に弱くて飲むと息ができなくなる、とか。
まずいソースを食べたら具合が悪くなった、とか。
2時間押し黙るわたし。
「あなたのそのシャツ、いいわねえ」とか彼女なりに気を使っているようだが、わたしは生返事。
全然関係ない人が1人いるんだから、話しの糸口を見つけないといけないと思うのだが、それって銀座出身の癖なのだろうか。
彼がやんわり「ママ、いい大学でたって駄目な奴いるよ。それに今は大学じゃない」と言っても
「そうかしら」
彼女は息子2人が高校トップの成績だったり、望むあいびーりーぐに入ったのが自慢。
「他のおうちは息子自慢がすごいのよ。でもしょうもないとこなのよ、スタンフォードとか。でも自慢するの」
あなたもご一緒なのでは? 批判の根底にあるのは、息子自慢でしょ? 自分が入れもしないのに、何で「馬鹿だ」とか言えるんだろう。

彼女はNew Yorkでの友達たちに頼られているらしい。が、みんな息子自慢、家自慢、などで疲れる、と言っていた。あなたも一緒です。
自分の周りにいる人は、大抵同じレベルです。周りを御覧なさい。
わたしは滑稽だなあ、わたしから見たら一緒にしか見えない、と後半面白くなってしまった。
「大丈夫? 具合悪いの?」
なぜすぐ身体のことなのだろう。会話のことだと気がつかないのか。
彼も黙り、わたしは胃もたれということで、黙る。

帰宅後、いつもお茶を淹れていたがすぐ寝室へ入り、ドラミとごろごろ。
彼女はわたしの、ビルケンシュトックのサンダルを欲しがっていたそうだが、何ですぐ「もらっていきたいわ」と言うのだろう。買えばいいじゃん。
文句の塊になってしまい、これは良くない、と音楽を聴いて眠る。
7時、彼女が準備をし、ホテルまで送った。
「今回は本当にありがとう!」とわたしが骨折時使っていた杖を持ち、彼女は帰って行った。
『フレンチキッチン』で朝ごはんを食べよう、とグランドハイアットに向かっている最中、わたしの
「あなたのお母さんって昔からずっとあんな風に話し続けてたの?」との質問に
「そうだよ。だから早く大学に行きたかった」と彼。
「でも、文句も多いし変わったよ」。
以前はおうちの大掃除に行く、と言っていたわたしだが、もう行く気も失せ、ぐったり。彼も
「疲れたなー」と会社前なのにぐったり。

結婚するかも、と誤解しても根掘り葉掘り聞かないでしょ。
わたしは彼の母上と「家族」という枠に入りたくないので、彼とは結婚したくないと今回強く思った。
他の人がいるのに、自分の好き・嫌いからその人が好きでたった今食べているものに「美味しくない」と言ったり、他の人の噂話ばかりする女には、絶対なりたくない、と思った。
そして、人に素直に謝って人の視点になって物を見たい、と思うし、論点をずらし自分を正当化するような人間には、なりたくない。
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by rinkomatsu | 2005-06-01 12:23 | 日々の生活。
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