タクシー。
今日の音。「Arthur Rubinstein」 Beethoven: Piano Sonata No.8 in C Minor, Op.13 "Pathetique"

わたしは毎日タクシーに乗るので、つかまえる際にその車の運転手さんが大体どんな人なのか、わかるようになった。
よく話す人、態度の悪い人、面白い人など。

自分の調子が悪い時は、妙な人の車に乗ってしまうことがある。
昨日、資料が重く、恵比寿の『green(グリーン)』に行ってお買い物をしたりしたので大荷物でタクシーを止めたのだが、ドアもきちんと開けない人で「あ、乗るのやめようかなあ」と思ったのだが強風だったしまあいいか、と乗ってみた。
表参道まで、と告げてから細かい道を説明したのだが曖昧な返事でちっとも聞いていない。
やだなあ、と思ったらブレーキを細かく踏む人で、荷物が座席から滑り落ちた。
でも何も言わない。

疲れていたので自然に出るためいき。
そして悪くなる車内の空気。

移動中にしかメイルができないことが多い最近、タクシーの中で携帯メイルを送るのは1つのお仕事になっているのだが、メイルも安心して送れないほどの運転。
どこのタクシー会社だろう、と運転席後ろに掲げられているはずのネームプレートを見ると会社名も名前もない。

早く降りたい、と思ったら急ブレーキを踏まれ、PCケースが転がり落ちた。
対向車が出てきたからなのだが、運転手は「運転してお金を貰っている人」で、プロである。
ケースを拾い
「今のって向こうが飛び出してきたんですか?」
「はい」
「事前に予測できなかったのでしょうか。そこに路上駐車している車があるんですし、見えていたはずなのですが」
「いえ、でも」
「今落ちたのはパソコンです。もし問題があった場合…」
と助手席の会社名プレートを見ようとすると
「立ち上げてみて下さい、多分大丈夫ですよ」とのたまう運転手。
「あなたが決めることではないですし、そんなに軽々仰ることでもないと思います。何かあった場合、飛○交通さんにお電話差し上げます」
「そうして下さい。でもさっきのは向こうが突然」
「もうあの車は走り去りましたし、車内で起きたことはそちらが責任を持つべきです。車内で起きたことですから」
黙る運転手。

主張したいこともわかるんだけどさ、あなたはわたしを乗せた時点で「客に告げられた場所まで安全に送り届けるという契約」がなされたってこと、わかってる? 民法だよまったくもー。
車内で起きたことの責任も取れないってことは、お客の命預かってるっていう倫理観もないのかよこいつは。
データが死んだら本気で訴える。損害賠償だぜこれ。いくらぐらいになるんだろう…。でもデータは帰ってこないんだってば! と頭の中で回る法知識とわたしの弁護士の顔。

「立ち上がりましたか?」と運転手。
「立ち上がりましたがデータが消えていることもありますのでご連絡申し上げます。我が社のシステムの者にチェックしてもらわないとわかりませんから」
弊社なんてお前に言ってられるか、と強い口調で淡々と告げると黙る運転手。

かなりご立腹でタクシーを降り、とりあえず飛○交通へ電話。
だって、急ブレーキ2回で謝んないんだよ!? それでもプロかよ。
わたしは本人にも文句を言うが、タクシーでかなりひどい目にあっていて他の運転手さんからも「お客様が電話してくれないと、上に上がらないからひどい目にあったら電話したほうがいいよ」と言われているので会社にすぐ電話する。

すると対応して下さった方は
「わたしもパソコンしますからわかるんですが、起動すれば大丈夫ってものでもないですし『多分大丈夫』はないですよね。それに車内で起こったことは事故でこちらの責任です」と、ものすごく話しが早い人でびっくりした。
あのう、「こちらが悪い」なんて明言しちゃって、いいのかい…?

わたしは記録として「先程御社のタクシーを利用し、こういうことがありました」という報告をするためと「その後」を考え「残す」ためにも電話しているのだが、電話口のその人は「もしパソコンに異常がございましたらわたしの上司までご連絡下さい」と対応。
クレームはお客に言いたいことを言わせて上司に譲るのが賢い対応。
ここってクレーム多いのかなあ、なんて考えてしまった。

とりあえずデータもPCも無事で、『Prada』のPCケースが非常に優れていることが判明。
だってbullet proof(弾丸から保護されるのだ!)だもんね…。

ま、こんな運転手もいれば、素敵な方もいらっしゃる。
わたしは素敵な方に乗せて頂くことのほうが多いのだが、この方は特に素敵だった。

三田の彼とすごい喧嘩をして某お洒落タウンから乗ったある夜中。
2時すぎのばりっと丑三つ刻だったのだが、その人はわたしが乗り込んだ際こちらを向き不思議そうな顔をした。
行く先は表参道で、それからもお客が拾えるので「いいお客さん乗せちゃったな」と言われる場所。何かいやなのかな? と考えたのだがわたしと相性の悪い方々に共通するお顔ではないその人。
「わたしちょっと変でしょうか」と聞いてみると
「あ、ごめんなさいね。甘いいい香りがして、どこかで嗅いだことのある香りだなと思って」と赤信号でこちらを向いて満面の笑顔。
この人はもてるわ、と思っていたら
「お客さんは香水つけてますか?」
「はい。ブルガリのプールオムのエクストレームというやつです」
「あ、それ僕の親父からもらったやつだ。男が香水つけるなんて遊び人じゃないんだからってあげちゃったんだけど、いい香りだったなあ」
というその人。

「お客さんは若いけど、『夜間飛行』っていう香水知ってますか?」
「はい。ゲランのですよね。母代わりの人が『ミツコ』をつけているので知っています」
「珍しいなあ。それをね、僕は好きになった女性にプレゼントするのが好きなんですよ」
かわいー! そして素敵。
「若い女の子にはつけこなせない香りなんだけど、この間好きになった子にあげたんですよ。そうしたら電話でね、『あなたがプレゼントしてくれたなんとかっていう香水を送って』って言うんですよ。でも発音がよくわからなくて」
発音?
「ぼくにはこういう風に聞こえんたんですけど、そういう名前の香水ってありますか? でもね、それ絶対夜間飛行じゃないんですよ。あっはっは。『別の彼氏にもらったんじゃないの?』って言ったら『そうだ。ごめん。ははは』ですって。あっちの女性は違いますよねー。はっはっは」
どうやら異国の女性と付き合っていたらしいその人。
本当に楽しそうに笑うのだが、その発音から香水は『Chanel』の『Allure(アリュール)』ではないかと。英語の発音のそれと日本語発音のそれは全然別物。
でも、その彼女はどうやら東南アジア系の方らしい。

運転手さん、面白いなあと思っていたら「お客さんももっと大人になったら夜間飛行をつけてくださいね」と。
夜間飛行なんて名前を久しぶりに聞いた。
夜中のすいた道をすいすい走りながら素敵なお話し(女の子うんぬんは別にして)を聞いたなあ、とそのタクシーが走り去った道を見て温かい気持ちになった。
実際わたしのつけている香水は甘い香りではないので、運転手さんの勘違いだと思うのだが。

移動手段のタクシー。
日本にはいろんな会社があって、いろんな方が運転されている。
いい人に出会えると目的地に着いてからも心がほかほかしているし、自分と合わない人やマナーが欠如した人に乗せてもらうと1日いやな気分になる。

運転手さんからすれば、密室の中見知らぬ相手に背中を向けているわけなので、いろいろあるだろう。

某広告代理店の社長でわたしがドンさまと呼ぶ方は「違う職業になれるとしたら、タクシーの運転手になりたいなあ。だってお客さんによって行く場所が変わるわけでしょ。表参道から千葉だってあるわけだし」と。
人によっていろんな捉え方がある。
わたしはお金があったら、好きな人だけ乗せるタクシー運転手になりたいなあと勝手なことを思った。(昔『カンヌ広告祭』で受賞した宝くじのCMで、タクシー乗り場にたくさん人が並んでいるのに乗せないタクシー運転手は宝くじに当たっていた、というものがあった。そんな感じが理想…。誰にでもそうだけど。はは。)
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by rinkomatsu | 2007-03-15 23:39 | 日々の生活。
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