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ありがたい声と、人。
今日の音。「U2」 “Where The Street Have No Name”

いつも、わたしがつらい時や大変な時に電話してきてくれる人がいる。
それは京都氏。
頑張って頑張って別れたのに、今はたまに電話をして近況を報告しあったり馬鹿話しをしたりする。
関西と東京を行ったり来たりするご身分となられてからは、たまに東京で夜ご飯を一緒にしたりしている。
「好きになって付き合ったのに、別れたら何もないなんてもったいない」と、京都氏の元上司、ドンさま(ドン・ジョンソンそっくりだとわたしは思う)は仰っておられたが、わたしと京都氏はとても上手に相手を「使っている」と思う。
言葉が悪いが、自分の気持ちを鼓舞させたり、自信が欲しい時わたしは京都氏にメイルをするし、京都氏は暇だったり若い人の意見が聞きたい時(なのかな)にわたしに連絡をとってくる。
または彼がさびしい時。
なんにもないのだが、好意を持っている人と話すのは心が温まるから彼は電話をしてくるのだと思っている。

今わたしがしているお仕事が決まった時、ご挨拶の電話をしたのだが繋がらず、メイルをしても返事がなく。
「も、もしや」と思っていたら、お仕事で海外にいた。
わたしはもう彼が手がけている仕事のことなど気にしていなくて、ニュースで彼が手がけていることについて報道され、やっと「あ、だから海外なのか」と気が付いたくらい。

メイルが来てほっとしたのだが、“きみの薦める『東京タワー』を読んで、情けないけど少し泣いてしまいました”とあり、今も時々わたしのことを考えるのだ、とか元気か、とかいつもの尊大というかいい意味のわがまま傍若無人っぷりがなかったのでこちらが心配になってしまい、けれど思いやりに満ちた文章だったのでこれはきちんと返信しなければ、と思いつつも忙しさにかまけて2、3日ほうっておいてしまった。
すると日本に帰って来たらしく、土曜日の朝11時に
「いろいろ事件があるから心配です。生きてますか?」と連絡が。

彼は、わたしが彼との関係に疲れ、行く先も告げず1人でホテルに泊まったり連絡を取らなくなったりするととても心配し、「警察に行こうと思っていた」と言う人だった。
今回の「いろいろ事件」というくだりも、わたしが彼と付き合っていた際にレイプ未遂にあっているのを知っているから。

今日の夜彼から電話があり、少し話したのだが、桐野夏生氏の『リアルワールド』を読んでわたしのことが心配になったのだそうだ。
「登場人物が危なっかしいことばかりやっとるんや。少しきみとだぶった」と京都弁で言う彼。
「わたしは平気ですよ、痴漢に遭ったけど」
「また? どうしたんや」
この間、ものすごく暑かった日に、わたしは黒いミニのワンピースで『青山ブックセンター』に『共同通信記者ハンドブック』を買いに行った。
『ampm』辺りでサーモンピンクなのか肌色か、なんとも表現しにくい色のシャツを着た眼鏡の30代半ばみたいな男(スーツのジャケットがない状態だった)にくっつかれているのを感じ、サングラス越しにじろっと見たのだが1m以内にぴったり。
気持ち悪い、と思いつつ、雑誌→洋書→漫画、と移動してもぴったり。
これはやばいなあと思ったのだがガイドブックコーナーで油断し、8月に行くオーストラリアの本をぱらっとめくっていたら、触れるか触れないか、まさに神の領域タッチでお尻を触られた。
「どこを触られたんや」
「お尻の割れ目辺りですよ、あー気持ち悪い」身震いするわたし。
「またひもパンはいてたんちゃうか」
「喜ばないで下さいよ京都さん」
「あ、また喜んでしまった」
あくまで明るい彼。

『青山ブックセンター』の廊下は広く、その男は手ぶら。
わたしがじいいいいいっと見るとこちらを見たが、あいつしか移動してなかったしあいつの手がわたしのお尻に触ったとしか考えられない状況。

また移動してもくっついてくるそいつ。
珍しく携帯電話を持っていたので写真を撮ってやろうと思ったのだが、法律を勉強している身なので「肖像権」なんてひっかかってしまい、レジで男の人にあたったら言って出口を見ていてもらおうと思ったのだが、レジ担当は「研修中」の女の子。
お会計をして領収書をもらっている間は姿を現さなかったくせに、出口に向かいエレベーターに乗ったらまたやって来た。
途中で1回降り、彼(一緒に住んでいる彼)に電話したのだが出ず。
そこで三田の彼(別blog参照)に電話をし、いろいろあったことを伝えた。

京都氏に「痴漢にあうのって、女の子が悪いんですか?」よく日本人が言うことを聞いてみた。
「悪くない」彼は即答してくれる。
あの人は、わたしがレイプされかけた夜、イタリアにいて電話をかけてきて、泣くわたしに
「きみは悪くない」と言ってくれた。
事件を知ったドンさまも「きみは悪くない」と言ってくれたのだが、某銀座老舗バーのマスターは「凛が悪い」と言った。

三田の彼も「きみが悪い」と言い、わたしは少し責められ泣いてしまったのだが、今更昔のことを責められても困るし、その時一番つらかったのはわたしだ。
三田の彼が海外であった経験をわたしに話し始めても、わたしはいろいろ思い出して聞くことなんて出来なかったし、つらいことを二乗しても何も生まれない。
この人は、人の痛みがわからない人なんだなあ、とぼうっと思っていた。

そんなことがあって、京都氏の低い男らしい声で「きみは悪くない」と肯定してもらったのは、わたしにものすごい安心を与えた。

では、痴漢に遭わないようにするためには?

これが難しいのだ。
警視庁のサイトを見たが、電車の中でのことしか書いていないし、まず女の子は「なんでわたしが?」と思う。痴漢に遭った男の人は、もっとそうだと思う。
そして、被害届を出しても「そんな格好してたからでしょ」。
ちょっとミニのワンピース着ちゃいかんのか。
暑いんだよ外! ミニは涼しいの! あほか。
見るのはいいです。許します。頭の中で何考えていても「思想の自由」は認められていますが、神でも大統領でも人の身体に勝手に触れていい権利なんてない。
ましてやそれが「お尻」とか「胸」なら特にだ。
立派な権利侵害です。

京都氏は「夏生氏によると“へらへら笑う”としなくなったって」
「それは馬鹿にしているという意味ですよね」
「そうだと思う」
「でもわたしはそういう人間ではないです。許せないですもん。今度写真撮ってやろうと思って。今まで誰も訴えたりしてないからまだし続けるんですよね? 根絶したいです」
「おお、写真、撮れ」
証拠として。
痴漢はものすごい神業で身体を触ってくる。
それは訓練のたまものだと思うのだ。
でも、その訓練には無数の女の子や男の子(遭った人もいるし)の悔しさ、憤りなどが隠されているのだ。
わたしは許さん。
捕まえたら「なんでこんなことするのか」が聞いてみたい。

アメリカに痴漢はない。
女の子がミニスカートやえっちなドレスで歩いていたら、口笛を吹くか声をかける。
性的欲求が生まれたら、痴漢ではなくレイプをする。
どっちがいいのかわからないけど、昼日中に痴漢なんてされない。
Tシャツにスカートでもいろいろ言われるわたしは、「何か悪いのか? 呼んでるの?」と悩んだことがある。
それでお洒落をしなくなった時もあったし、夏、誰かと一緒じゃないと外に出られない時もあった。
勝手な欲求で人の人生を侵害するのはやめてほしい。
好みの服を着て外を歩く自由を奪うのは許せん。
もし1万歩譲ってわたしが「呼んでる」のかもしれないけど、だからといって触っていいか、襲っていいかといったら違う。
痴漢に遭ったりあとをつけられるようになると「あ、夏か。やだなあ」と思っていたが、今年は戦う。
決めたのだ。

痴漢系の話しをすると必ず「もてると思ってるんでしょ」とのたまう頭のあったかい人がいるのだが、痴漢は奴ら独自の視点で対象を選んでいるため、こっちにはわからんのよなんでされてるか。
ミニだったら「ミニだったからか!?」って思うけど、普通の格好でもされる。
理由がわからないから、とても困るし人が怖くなる。
一見普通っぽい人(顔は全然違うけど。やっぱりおかしい)がそういうことをしてくるのだ。
狂気としか思えない。
痴漢に遭った人を非難する、日本の風潮はわからない。そういう人にはぜひ1度、実体験していただきたい。本当に困惑するから。怖くなるから。

わたしはこれから痴漢に遭ったら、迷わず写真を撮り警察に連れて行き
「何でこういうことするの?」と聞いてみたい。
痴漢研究してみたいのだ。敵を知らないと戦えないから。

他の話しになり、会社にいる京都氏は「メイルするわ」と電話を切った。

わたしにはつらい時に「それが何でもなくて、もし困っていたら話しを聞くよ。失敗しても支えてあげるから」と言ってくれる人が周りにいて、とても幸せだと思った。
京都氏も、お父さんも、もういないけれどおじいちゃんとおばあちゃんも。そして友達。
彼(アメリカ人)も。

三田の彼には、それがない。
「愛をくれない」とか「わかってくれない」と叫び、自分こそが「愛に枯渇した」「人を理解しない」人間だと体現しつつ自分だけがそれに気が付いていない人。
わたしは何で今も一緒にいて、いろいろひどいことをされたり言われたりしても一応そばにいるのだろう、と思った。
今、それは同情なのかもしれない、と思っている。
同情も一種の愛の形だと思った。憐れみではなくて、同情。
おこがましいが、胸を貸す感じ。
道に倒れている人を放ってはおけない。
そこまで三田の彼は、人を信じるとか人を大事にするとか尊重するという感情が欠けている。
だから話しも出来ないし、わたしの過去の人に対していちゃもんつけるし、つらい経験に対し
「きみが悪い」なんて言えるのだなあ、と。

一緒に生活する彼も、京都氏もおっきい人でわたしをまるごと肯定してくれた。
肯定した上で、間違っていることや危うい点はあったかく訂正してくれた。
わたしは男の人を見る上で、人を肯定する人間としての大きさと、お勉強だけでは培われない頭の良さを大事にしている、とわかった。

今日は塾を休んでしまったのだが、ぼうっと表参道の夜景を見ながら彼(アメリカ人)としゃぶしゃぶを食べ、京都氏からの電話に出、なんだか、ほっと出来てよかったと思った。
by rinkomatsu | 2006-05-16 02:03 | 日々の生活。
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